半泥子は、絵付けについて、こう教えてくれたことがあった。やきものの絵は上手に描かなくてもいいのだ、と。ではどういうものが良いのかと聞くと「やきものの空間に、ぴたっと入っている絵がええんや。絵がやきものを邪魔してはあかん」と答えた。つまり、器胎(ボディ)と絵が一体になっているのが肝心で、上手下手は二の次だというのだ。
絵描きさんの描いた絵付けは、こうした見極めがない。絵が主流だから器の空間に収まりきらず、飛び出してしまいがちだ。また、画家の先生はデザインはするが轆轤はやらないので、素地と絵をマッチさせるのが非常に難しくなる。私ら陶工の場合は、素地から作るために違和感が出にくいのである。
私は、絵付けする場合、迷わない。迷ってはいけないと考えている。描きたいものは、前からよそで何度も描きつけておき、イメージも形も頭の中にしっかり入れておく。そして、何も見ず自分の思うまま描けるようになってから、やきものに絵付けする、そのようにならんのでは迷ってしまう。考え考えやっておったら、しどろもどろになって絵に動きがなくなる。気韻生動どころではないのである。
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